ニュースフラッシュニュースレター119号(2024.10.1発行)を掲載しました(2024.10.1)ニュースフラッシュ

◆世界は憲法九条の存在とその凄さを知った
そして何よりも、90年から92年の日本の国会における憲法論議を通して、世界中の普通の人が、日本が憲法九条を持っているということを知っちゃったんです。それまでは、日本研究者の専門家がかすかにその九条があったかなというぐらいだったんです。どんどん日本は軍備を拡張し、バブルの時には防衛費は1%以下でも、何だって買えちゃう。普通の人が見ていると、アメリカ軍と一緒に演習したりアメリカ軍と同じ装備を持った日本の自衛隊の姿を見て、絶対湾岸戦争に出ると思った。ところが見ていると、出てこない、出られないんだと。オレたちが軍隊だと思っていたのが、国際連合加盟国の空軍、海軍、陸軍ではなく、日本の自衛隊は、self-defence forces で軍隊でないらしい。アメリカ軍と同じ装備を持ち演習では使えるが、本番では使ってはいけない。自分たちの領海では使ってもよいが、外では使ってはいけないらしい。凄いものをもっていると。特にアジアの中国や朝鮮半島の人々は、いままで日本は軍事大国化していると思っていたが、軍隊じゃなかったんだということに気がついたんです。
アメリカの最大の同盟国日本が、アメリカと全く違う考えを持っている、なんという凄さだと。中東の人たちは九条の問題に日本人以上に熱いですよ。もう寂しくなったら中東を旅してください。九条の会の者だといってね。有明集会のときも、日本の新聞はこれぐらいの小さな記事だったでしょ。クウェートの新聞では一面ぶち抜きですよ。大江さんが喋っている時、どれほどの人が集まっているか分かるほどのパノラマ写真が入って、呼びかけ人の講演は全文翻訳して載っている。日本のテレビが「九条の会」の報道をしなくても、アルジャジーラがちゃんと報道してくれる。皆さんもこの集会をアルジャジーラに言うと全世界に流れる。いや笑いごとではないんです。
憲法は権力を縛る、軍事行動を出来なくする力を持っているんだ、ということを全世界の人が知ったんですよ。日本ではね、自衛隊が海外派遣されてしまったという敗北感のみが皆さんの中にも漂っている。でも九条の凄さは、あの時証明された。そして2000年代の小泉がブッシュに追従するなかで、ばっちり九条が大事な役割を果たしたんです。そして私たちはもう一度九条をきちっと守っていき、そして活かしていく、という世論を作っています。

◆草の根の「九条の活動」を
そして、2008年に逆転しましたよ。2009年はどうでしたか。読売新聞が世論調査をやっている4月第一週、日本は北朝鮮ミサイル報道だらけでした。4月5日に北朝鮮が、ミサイルを打ち上げた(実はロケット)号外まで出した。10日前の核兵器廃絶のオバマ演説がかき消されてしまった。これがまさに日本のマスメディアなんです。マスメディアのやり口なんですよね。今までだったら、それで総選挙でも騙されていた。でも、2009年は、4月第一週だけ騙されて、もう一度「憲法を変えても良い」が51%になった。まだ流動的なんです。せめぎ合っている。沖縄の普天間基地問題で最大の問題は、なんで日米安保条約がこんなに対米従属的なのか。そういう怒りが国民の中に沸々と煮立ってきた今年2010年4月第一週はもう一度、「憲法を変えない方が良い人」と、「憲法を変えた方が良い人」が、拮抗していますよね。
ですから私たちが運動の力を緩めるともう一度押し戻されちゃうんです。大事なことは、それぞれの地域の人たちと堅く私たちが結びつき、この九条問題で絆を強めていけるかどうか。全国でいくつもの自治体で住民の過半数の署名を実現した「九条の会」がありますが、そこが今頑張っているのはね、署名をしてもらったことで終わらせないで、署名をして頂いた方々に九条の会ニュースを必ず届ける、そして一緒に頑張って行きましょうねと、関係をずっと続ける。そういう地域のある意味でのセイフテイネットワークの役割を「九条の会」が担っている。頼りになるのは「九条の会」だけだと言われて喜んで良いのか分からないですが。
つまり、この90年代から2000年代にかけて私たちの草の根からの運動が、今まさに徳之島までも超党派でしょ、沖縄県議会も超党派で、だんだんみんな「九条の会」的になってきている。その運動を今、参議院選挙を前にした形で、いま九条を巡る問題は、どういう政治の焦点になっているのか、これを正面から何時どんな時にでも訴え続けて行けるのが九条の会の活動なのです。別に選挙があろうがなかろうがかまわないですから、その対話をどれだけ多くの人と続けていけるのかがいま問われています。

◆「核の傘」・「核抑止力」を疑う
じゃあ今、対話の最大の課題は何かというと、アメリカの核の傘で日本を守る、核抑止力ですね。これはソ連があったから有効だったでしょ。ソ連の核の脅威に対しアメリカの核の傘に入る。しかし1991年にソ連は無くなってしまい、本当はいらなくなった。だけどアメリカのクリントン政権は、北朝鮮が核開発をしていることを煽りに煽って、これを危機の最大の要因に仕立てたでしょう。そして第二次朝鮮戦争勃発かという危機になったのが93年、94年ですよ。細川政権の時、アメリカが朝鮮有事の際、日本の自衛隊が協力することも含めた“密約”が暴露されましたね。これが正にあの大きな問題になった。でもね、アメリカが北朝鮮に対して軍事行動をとる際に、細川政権の与党に日本社会党が入っていたでしょ、日本社会党は当時朝鮮労働党の友党だった、日本社会党を政権からはずさないと、アメリカの軍事行動に協力できない。日本社会党を政権からはずすためには、細川を政権から降ろさなければならない。総理大臣を辞任に追い込むためにはよっぽどのことがないとうまくいかない。鳩山さんは、よっぽどのことがなくても辞任しそうですけど、よっぽどのことがない限り辞任させられない。予算案が通過しないことが一番いい。これが小沢一郎が仕掛けて、絶対に実現しない用途を決めた“国民福祉税7%”というのを94年度の予算に入れさせたことです。消費税3%の代わりにこの国民福祉税7%を94年度予算案に急遽突っ込んだ。この予算案作成の中心人物が斎藤次郎という男でしょう。ちょっと皆さん、このあいだ、その映像が流れていたはずですよ。大蔵官僚だった斎藤次郎が国民福祉税法案を、細川護煕が深夜の国会で小沢一郎に睨まれるようにして記者会見に出してやったんです。ところが、これが通らなかった。4月8日、突然細川が辞任します。そして日本社会党が政権から離脱し、新党さきがけの鳩山たちも政権から離脱して、小沢グループだけ、つまり自公政権みたいになったんですよ。羽田孜の少数与党政権です。この時にクリントンは北朝鮮に軍事攻勢をかけようとして第2次朝鮮戦争勃発かという危機が訪れた。第2次朝鮮戦争が勃発しなかったのは、韓国の血を流した民主化闘争を経て、韓国の大統領は金泳三でしたが、大統領選挙で戦った金大中を青瓦台の大統領府に呼び、この問題をどうするか議論した。もしアメリカが北朝鮮に対して軍事行動をとったら、その時アメリカのクリントンは韓国に小型原子爆弾、小型核兵器を使わせてやるよといってたんですよ。一発でピョンヤンをやっつければよいと。でもそんなことになれば韓国の民主化の成果は一切水の泡になる。断固として拒否する。アメリカが北朝鮮に攻め入るなら、韓国軍はアメリカ軍と戦うとまで言って拒絶したんです。これでクリントンも打つ手がなくなり、94年6月16日カーター元大統領を大統領特使としてピョンヤンに派遣して、北朝鮮は核開発を止めなさい、アメリカが毎年50万トンの石油を供与します、2003年までには原子力発電をワンセット上げますから、こういう約束をした。
これで事なきを得たと、みんな思った。だから自民党の河野洋平さん、たった一人だけ総理大臣になれなかった自民党総裁、この時動き出して、自民党の方が議員が多いけれど、念願の日本社会党委員長の総理大臣にしてやるから連立を組まないかと呼び掛けて日本社会党もOKして、村山富市日本社会党委員長を総理大臣にする、自民党、日本社会党、新党さきがけ政権ができたのが95年6月30日。この時は、小沢一郎と鳩山由紀夫は対決していたんですよ。そのことをしっかりと思い出さなければ。
けれども誰も予想しなかったが、7月8日にカーターと約束した金日成主席が突然死んでしまった。息子の金正日が主席になろうとしたが、クリントンが大統領のような大事な政治的椅子を世襲制で継ぐのは、そんな独裁体制は許せないといい、一気にまた危機が高まって7月20日小沢一郎が仕掛けた質問で、村山富市さんは、日本社会党の方針を180度転換させて、自衛隊の合憲、日米安保条約堅持を言わされちゃった。これだからアメリカと対峙出来なくなってしまった。だから、村山富市さんが止めた後、橋本龍太郎が総理大臣になった時に、普天間基地を返せという交渉がようやくできた。今の政治状況と90年代のこととが全て関わり合っているんですね。

◆「核兵器のない平和な世界」実現は日本政府の責務
一番大事なことは、北朝鮮問題を交渉の道具にしないこと。北朝鮮問題があるから九条を変えてアメリカとくっつけと言ってたでしょ。今、北朝鮮問題と言えば、日本では、拉致家族問題しか言われておりませんが、何が最終目標かといえば、6カ国協議で朝鮮戦争を終わらせることなんです。2003年に韓国と北朝鮮は朝鮮戦争を終わらしているんです。南北首脳会談で。アメリカと北朝鮮の間では終わってないんです。1953年私が生まれた年に休戦条約、私も間もなく57才になりますが、57年の長きにわたりお休みだとして、終わっていないのが朝鮮戦争なんです。何故朝鮮戦争が終わっていないのかと言えば、終わらせるとアメリカ軍が単なるアメリカ軍になってしまう。朝鮮戦争は、国連憲章第2条に違反した北朝鮮に対して軍事制裁をするといって国連安保理決議で決めている。第42条です。日本を占領していたアメリカ軍が国連軍として朝鮮戦争に出ている。日本のアメリカ軍は米軍司令部と言うでしょ。でも韓国のソウルにあるアメリカの軍司令部は、ニュースでアメリカ軍司令部と言わないで、国連軍司令部と言っているでしょ。そこの命令を受けて在日米軍がいる。この金看板を無くしたくないからアメリカは朝鮮戦争の講和条約、すなわち平和協定を結ぶことを、ずっと拒否してきたんです。

ようやくブッシュが他になにもよいことをしなかったバカな大統領になりそうだからというんで、北朝鮮をテロ支援国家指定から外して、前進させようとしたでしょ。その後、拉致家族問題で、安倍政権、福田政権、麻生政権がずっと足を引っ張ってきた。日本が態度を変えれば大きく前進します。北朝鮮を、みんな、非核化しようとしているでしょ。韓国は非核の国です。日本は唯一の被爆国で、非核三原則の国、六カ国協議のうち3カ国は非核の国です。それと世界第1位の核保有国であるアメリカと、第2位のロシア、第4位の中華人民共和国が一緒に交渉しているわけです。この交渉が成り立てば、講和条約を結び、直ちに安全保障条約を結ぶことになります。非核3カ国が、あなた方核保有国が何年何月何日までに完全に核兵器を“0”にするという約束をこの条約に盛り込んでこそ、本当の東アジア安全が得られるでしょうと主張すれば、世界から大喝采が得られるでしょ。文句は言えませんよ。
これを予期していたからオバマ大統領は2009年4月5日、唯一、核兵器を使用した国としての道義的責任を持って核兵器廃絶に取り組んで行く、それには全世界の協力が必要と訴えたでしょ。直ぐに応えるべきだったのは、唯一つの被爆国の総理大臣麻生太郎だったんじゃないですか。なのに麻生は、核の傘はどうなるのか、などとうろたえている。今日本政府が「いまアメリカの核の傘はいりません、核抑止論なんかいうのは全然根拠がないんじゃありませんか、核兵器なんか持っているから他の国も持ちたくなるんじゃないですか、やめたらいいじゃないですか」と言えば、一気に問題は解決するんです。いまその正念場です。そのNPT条約見直しがこの5月に議論されます。

◆九条の思想が世界を変える
なんだかね、アメリカに行く人の多くが「九条の会」の会員のようです。まさにいま、九条の思想が世界を根底から変えようとしている。今まで、夢や理想と思っていたことを、私たち名もない草の根の庶民が現実のものに出来る、そういう時代に入ってきた。
今日は有難うございました。

 

高田 健 講演録

若葉・九条の会2008/3月/23日 みつわ台公民館

憲法九条のいまと「九条の会」運動
―――日本の九条から世界の9条へ―――

はじめに
こんにちわ、高田です。1時間20分ほど時間を頂いていますので、頂いたテーマについていろいろとお話してみたいと思います。
実は、私、昨日はアメリカ大使館の前で市民の方たちとデモをやっていました。イラク反戦のデモです。1500人ほど集まりましたが、新聞には載らないんですね。クルド人の日本に亡命している親子たちが、大勢デモの先頭にいました。そして「NO! WAR」「YES!PEACE!」と叫んで、私も一緒に歩きました。
3月20日でイラク戦争は満5年になるんです。3月20日前後に「ワールドピースNOW」としてデモをしています。まる5年経ってみて、このイラク戦争というのは何だったのかと、最近は新聞の社説も書いています。これが今も続いている。私たちはともすると忘れがちになりますが、いまだに、日本の自衛隊がこの戦争を、アメリカを、手伝っている。航空自衛隊です。この前一部帰って来たのは陸上自衛隊です。航空自衛隊は、今もイラクにいてアメリカを手伝っている。それから今年の1月に作られた法律で、インド洋の北部ではアフガニスタンの戦線で戦っているアメリカ軍とイギリス軍を支援するために、日本の海上自衛隊がこの戦争を手伝っている。

今、花がたくさん咲いていて、いい季節ですね。のどかです。しかしこの、のどかな日本から派遣されている自衛隊が、今、戦争をやっているということを私たちは忘れてはならないと思うんです。時々、忘れちゃうんですね。私たちの税金で派遣されて、爆弾を落とす手伝いをイラクとアフガンの戦線で今日、なおやっているということを・・・・。
先日のイージス艦の事件などでも思うんですが、彼らの意識には「自分たちは国のために戦っている」という非常に傲慢な考え方があるのではないか。彼等にいわせれば「今も戦っているんだ」という・・・。しかし、クルドの子どもたちは「戦争をやめて!」と言っている。日本は本当に政治亡命に冷たい国です。「自分の国にいられないから何とか助けてくれ」と日本に渡ってきた少数の人びとに対して亡命を認めてあげない。それどころか、その国に帰そうとまでするのです。イラクは2700万人の国です。そのうち国内難民といわれる人たちが200万人います。家を追われて国内をさまよっている人たちです。外国にいる人たちが約200万人以上。およそ450万人の人々がいまだに難民となっているんです。そして安全な水が飲めない人たちが40%だそうです。そして、400万人以上の人々が飢餓の状態にあるといわれています。この5年間、ブッシュの戦争を日本が手伝ってきた結果がこの状態です。それでいて先日「フセインを倒したのはよかった」とブッシュは平然と言いました。戦争を始める理由にした「フセインはアルカイーダとつながっている、大量破壊兵器を持っているからイラクを叩く」という予防戦争の発想を、ブッシュはしたのです。やられる前に叩くというのは、これは戦争では大変なことです。アメリカという大国の大統領が 2つの理由で攻撃した。ところが、この2つの理由は全くの嘘だったとアメリカの政府自身が認めている。この戦争で殺されてしまった人々はどうなるんだと思いますね。その数はわかりません。15万人という人、40数万人という人もいます。わかんないんです。その片棒を私たちの国が担いでいるんです。この「憲法九条」を持つ国がです。このことを最初にお伝えしたかったのです。昨日デモをしたものですから。

福田政権の性格 
今、政権は福田さんにあります。去年の9月に安倍内閣が替わりました。
安倍さんはその1年前の頃は、本当に勢いがありました。任期中に憲法9条を変えるんだと言っていました。明文改憲をすると・・。1期3年、2期6年の間に変えてしまうというのが安倍さんの目標でした。それで去年の参議院選挙でも155項目公約があった。みなさん覚えていないと思うんですが、155並べたその第1番が「新憲法の制定」だったんです。
それで安倍さんは負けたんです。大負けに負けた。その結果、政権を投げ出した。
では、替わった福田さんはどのような政権か。
安倍さんの政権はある意味で分かりやすかった。大変まずい政権なんですけれども、ちょっと硬い用語でいうと「新自由主義」と「新国家主義」が結合した政権だといわれました。アメリカのブッシュ政権の後ろにはネオコンといわれる人たちがいるといわれますが、これと似た政権だった。「教育基本法」なんかも非常に乱暴に変えてしまった。しかし、もたなかった。みんなから見て「どうもこの政権はあぶない」、ですから去年の参議院選挙で「これ以上政権を続けさせるのはいやだ」と、いろんな人がいろんなこと考えて野党に投票したんですね。その結果、安部政権は倒れた。私は、これは、日本の有権者の賢明な選択だったな~と思います。あのまま、もし、ああいう政権を許していたら、この国はどこまで暴走していったか。多分みなさんの「九条の会」も同じ思い、心配をしたでしょう。全国でたくさんの「九条の会」が出来てきた背景には、こうした安倍さんの動きへの危機感もあったと思います。今、市民が立ち上がらなければ大変と・・・。そういうことで全国6800以上の「九条の会」ができました。いまも次々と出来ています。

世論調査を見ますと、2004年に「九条の会」が出来て、それまでは「憲法九条は変えない方がいい」が少しづつ減っていたんですが2005年からは、どの新聞の世論調査でも「憲法九条は変えない方がいい」という声が多数になってきました。「読売新聞」の調査で見ても、「憲法九条は変えない」という人の方が多くなっている。「変える」という人の方がずっと少ない。「九条以外についてどこか1ヶ所くらい変えてもいいんじゃない」という意見はありがちなんですね。例えば「おもふ」なんて古い言葉で書いてあるから、「若い人にわかりやすく」というような意見も多くなっていましたが、このような意見も2004年を契機にやっぱり少なくなってきている。それで「変えた方がいい」という意見と「変えない方がいい」という意見が去年あたりは、非常に接近をしてきている状態です。だから、安倍さんの政権やその前の小泉さんの政権の下で、「この国は危ない方に行こうとしている」と多くの人が考えたのです。「九条は守らなければいけないよ」「この憲法を変えたら大変になるよ」と。そういう声が多くなったんですね。そういうみんなの気持ちの反映なんです。去年の夏の参議院選挙の結果は。

福田さんはハトの帽子をかぶったタカ
その後、登場したのが福田さんですね。彼は「背水の陣」だといって出てきました。この内閣はどういう内閣なのだろうかということを考えたいわけです。アメリカのブッシュに良く似た安倍政権の後出てきたのだけれども、皆さんもお感じと思いますが、とらえどころがないんですね。ひとごとのようなことを言う。安倍さんとはやり方が違う。1月の施政方針演説のなかでも「改憲」という言葉は殆んど出てきません。安倍さんの時には繰り返し出てきた「憲法改正」という言葉も殆んど出てこないんですね。そうすると、福田さんは安倍さんから見て“ハト派”なんでしょうか。安倍さんはモロタカ派ですから・・・。日本の政権はタカ派からハト派になったのかな?と思ってしまうような政権なんです。福田政権は・・・。ただ福田政権を見る場合、彼がこれまでやってきたことを見る必要があります。何をやってきたのかを。

まず1つ思い浮かぶのは、自民党は今「新憲法草案」というのを持っているのをご存知だと思います。自民党は今の憲法を変えて新しい憲法に作り変えるという草案を既に作っています。草案を作る時には、憲法は長いですから各小委員会というのを作ってやった。「憲法の前文小委員会」「第1章天皇制に関する小委員会」「9条の安全保障に関する小委員会」「国家機構に関する小委員会」という具合に・・・。そこで検討して案を作って全部つなぎ合せて「新憲法草案」というのを作ったんです。福田さんという人はこの草案を作る時の9条に関するところ、安全保障条項に関するところの小委員会の責任者だったんです。だから今の自民党の新憲法草案は9条を変えてしまうという案なんですが、これを作った責任者は福田さんなんです。福田さんは小委員長だったんです。因みに、前文の委員長はあの中曽根さんです。天皇制のところはなぜか宮沢さんだったんですね。
福田さんは今の自民党の新憲法草案を作った人なんです。9条2項を全部書き換えて日本は戦争ができるように自衛軍を持つようにしようと。
そして自衛軍の仕事は3つだと書いてある。この新憲法草案に・・・。1つは国防(国を侵略から守る)もう1つは、ハッキリと、「海外で平和維持のために国際協力のための活動をする軍隊である」とかいてある。それからもう1つ書いてある。「国内の治安を守る」と。治安維持のためにこの軍隊は出動すると。自民党の新憲法草案の9条に関するところ、自衛軍の仕事はこの3つだと言っている。昔を思い出しますね。警察では手に余るような民衆の市民運動などが起きた時には、この軍隊が出てくるというんです。そういう草案を福田さんは書いた人なんです。だから、なにか掴みどころの無い憲法をそんなに急いで改悪しそうもないような顔をしているんですが、彼はヌラーっとしてそれを書いている。これは絶対に見ておかなければいけない事だと思うんです。
それからもう1つ、あの人は小泉政権前半の官房長官です。その時に福田さんは「派兵恒久法」という問題について検討させたんです。自分で官房長官の私的諮問機関を作りました。研究者を集めて・・・。「自衛隊を恒に外国に出しで活動出来るようにするにはどういう法律を作ったらいいか」を研究させたんです。これは報告書を出しています。2002年の12月に諮問機関に報告書を出させています。それが法案作成に入る前に彼は官房長官を辞めてしまうわけです。この「派兵恒久法」についての答申案は福田さんが官房長官を辞めた時点で“お蔵入り”になったんです。今度、自分が首相になったからこれを蔵からひっぱり出す機会が来たと思っているんです。今、やろうとしているんです。
もう1つ。福田内閣は、今の閣僚を自分で新しく選んだのではない。普通、首相になると新内閣を組織するのですが、安倍さんの内閣をそのまま引き継いだんです。「居ぬき内閣」と言われていますね。だから昨日まで「うどん屋さん」だったのが、今日からテーブルそのままで看板だけ架け替えて「ラーメン屋さん」になったのと同じなんですね。超タカ派の安倍内閣のメンバーをそのまま引き継いでいる。この6ヶ月の間、何んだかわからないことを福田さんはやっているように見えますが、いまあげた3つの点だけを見ても、そう生半可な内閣ではないのです。但し、ご承知の通り、参議院が半数ないわけです。これがいろんな影響をあたえています。「ネジレ国会」なんて言いますよね。なんか悪いことのよう、正常ではないように言いますが、これは、私は結構な事ではないかと思うんです。多数与党が決めたことがスーッと通ってしまうのでは国会の意味はない。議論、チエック機能が働かなければ意味がない。日銀の総裁の問題でも、ガソリンの問題や道路特定財源の問題でも、国民が知り、考えることが出来るようになったのは良いことではないか。

今、福田内閣支持率がどんどん下がっています。解散も出来ない。防衛省の汚職問題はどっかに行ってしまった。イージス艦の事故も許し難い。なんにもしない。しかし、私は福田内閣のこの6ヶ月間の最大の罪状は、自衛隊をインド洋北部に派遣するという新法を採択したことだと思います。せっかく11月に今までのテロ特措法の期限が切れて自衛隊が帰ってきたわけです。4ヶ月間自衛隊はインド洋でアメリカの戦争の手伝いをしないで済んだんです。しかし1月にこの新法を作って、それもものすごい強引なやりかたですよね。衆議院で決めて、参議院で否決されて、否決されたのをまた衆議院に戻して、衆議院が優先だと憲法59条を使ってこれでやったわけです。とんでもないことをやったわけです。これが福田さんのこの半年の罪状です。
そうして私が「福田さんは行き詰まるであろう」と考えるのは、この法律に関係するんです。この法律は1年間の時限立法なんです。「特措法」と言うんですね。航空自衛隊がイラクに派遣されている根拠も「イラク特措法」という特別措置法なんです。こんどの新法も特別措置法です。何故、特別措置法なのか。それは憲法9条との関係でそう簡単に認められる法律ではないんです。だから目的を限定して、期間を限定して特別に立法化するという主旨で特措法というのを作るんです。“特別にカンベンしてね”と。今度の給油新法も特措法で期限は1年です。1年と言うことは間もなく期限が来ちゃうんです。来年の1月までということは、今年の秋ごろから問題になると言うことです。私たちは、もう一度このことを考え議論するチャンスがあるわけです。延長するのか。認めるのか。認めないのか。使われる税金は、700億円ですよ。これだけのお金を使ってアフガンの人たちを爆撃する手伝いをもう1回続けるのかと・・・。

あぶない!「恒久法」・・この秋に問題に
アメリカが「今からアフガンを攻めるので日本も手伝え」と言った。2001年です。それからイラクを攻める時も、「今からイラクを攻撃するから日本は手伝え」と言ったわけです。そう言われるたびに「特措法」を作らなければならない。2001年の時には「ショーザフラッグ」(旗を見せろ!)、イラクの場合は「ブーツオンザグランド」(陸上自衛隊を出せ!)と言われたんです。アメリカが戦争をするたびに、日本の政府は「特措法」を作らなければならないんです。われわれも黙ってはいない。「戦争の手伝いをする『特措法』はいやだ」「憲法9条違反ではないか」と私たちは言う。だから、政府与党にとっては、「特措法」というのは困ったものなんです。それで福田さんが考えているのが、2002年の時から考えた「恒久法」というやつなんです。「特別」に対する「一般」、「時限」に対する「恒久」です。いつでも、何処へでも、自由に自衛隊を出せる法律があったらどんなに便利だろうと、ずーっと考えてきたわけです。「恒久法」に対する欲望は政府与党のなかにずーっとありました。しかしいくらなんでもそう簡単にはいかない。文字通り「9条あって無きが如し」になります。こんなのが出来ちゃったら大変ですよ。福田さんはこういうのを作りたいと思っているんですよ。これが、今、私たちの目の前にある大変な問題なんです。

今日みなさんに考えてほしいのは、今年の「平和の問題・憲法九条の問題」に関係する最大の政治問題はこの「恒久法」の問題だということです。問題にしなければいけない。スーッと国会を通ったりしてしまったら、この国は大変なことになる。今日のようなのどかな日に、日本の自衛隊が戦争をしていることが日常になることをわれわれが選択させられてしまう。私たちは、急いでこの「恒久法」の中身について勉強して、市民として意見を言っていかないといけないんです。「九条の会」に集まっているみなさんには是非お願いしたいんです。私たちは本当に9条が大事だと思ってる。そしてこの9条の価値を、世界からも認められている9条を本当に大事にして、これを指針にして、この国が運営されていくように望んでいる。それに真っ向から水をかけるような動きにこの「恒久法」がなっていることを私たちは気づかなければ・・・・。安倍さんが憲法を変えると言ってそれが頓挫した、一安心であることは間違いないけれども、「恒久法」という変化球で「憲法9条」を亡きものにしようとしていることを私たちは許すわけにいかないと思います。

次に「恒久法」といわれるものの中身を考えてみたい。実は「案」はないのです。出来ていない。2月末に与党協議会というものができて自民党と公明党でこの法案をつくることになっていた。ところが、協議会が未だに開かれていません。どうしてかと言うと、防衛省が次々と不祥事を起こしている中で、「恒久法」をつくるなんて言ったら公明党は支持されなくなるので与党協議会に応じるわけにはいかないと公明党が言っている。そんなわけで「派兵恒久法案」はまだ政府のなかではつくられていない。があるのです。
それは どこにあるかと言うと2006年の夏に自民党の安保防衛小委員会というところで「国際平和協力法案」というのを作った。委員長は石破防衛大臣です。私たちはこの「石破私案」を見ることによって、ある程度どんなものを作りたがっているかわかります。
レジュメに、いくつか特徴を書いておきました。

● 石破試案(06/8月)の問題点 ▲米軍からの要請でも、さらに日本独自の判断でも派兵できる。▲国家間の戦争でなければ戦闘地域にも派兵できる。▲外国軍隊や類似の組織とも連携できる。▲現地で起こる危害・破壊行為を武器で予防・制止できる。▲警護者や基地・車両などへの侵略行為を武器で阻止できる。▲国連決議や旗国の同意があれば世界中で船舶を臨検できる。▲群衆が暴行・脅迫やその危険があるときは武器で鎮圧できる。 
今、日本では、憲法の下で、戦闘地域には自衛隊は派遣できないことになっていますね。小泉さんのあの有名な言葉「自衛隊が行くところは非戦闘地域だ!」。しかし石破試案ではそうではないのです。自衛隊はどういう時に戦闘地域に駆けつけるか。あの佐藤さんという今度議員に当選した陸上自衛隊の“ヒゲの隊長”がとんでもないことを言いましたよね。イラクでオランダ軍がゲリラと戦っている、そこに自衛隊は支援に行ってはいけないんですね。だから、彼(佐藤さん)は今の法律を勝手に解釈して自衛隊の偵察隊を送って、その偵察隊が戦争に巻き込まれているということにして、それを助けに行くという口実で内乱に介入できると考えていたと。“駆けつけ警護”と言うんだそうです。
昔を知っている人は「同じだ」と思うでしょう。戦争を始めるとき、ちゃんと原因を作らせておいて、そこに日本人がいるから助けに行くという理屈をつけた。試案の表現は(暴動とかが発生する)おそれのあると認められた場合に、自衛隊はそこに参加できるというものです。行って治安維持活動をすると・・・。
だから、イラクの人たちが「アメリカ軍出て行け」とデモをしている。怒っている。これは暴動になりそうだと自衛隊が判断したら、「暴動」を鎮圧することが出来るという法律なんです。1つひとつ見ていくと大変な法律案なんです。
このような石破試案が、たたき台になって、早ければ今度の国会の最中に法案が出されるかもしれない。法案を出しても今度の国会で採択するのはおそらく不可能でしょう。そうすると継続審議ということになる。9月ごろから臨時国会が開かれます。6月の国会は大幅延長されません。サミットがありますから。9月秋の国会で法案を通したいと考えているでしょう。そんなことになったら本当に大変です。私たちも、よほど今頑張って勉強しないと・・。法案が通ったらどういう状態になるかということを想像して下さい。

イラクでの「ファルージャの虐殺」をご記憶でしょう。アメリカ軍が「ファルージャという町にゲリラが隠れている」と言って、ファルージャの町を封鎖した。完全封鎖してだれも町から逃げ出せないような状態にして総攻撃をかけた。病院でも何でもやった。これが「ファルージャの大虐殺」です。これを助けたのがイギリス軍です。ブレア政権はアメリカ軍と一緒にファルージャに踏みこんだのです。イラクの人たちからものすごい怒りを買いました。だからイギリスでテロがおきた。報復を考えた人たちがいたんです。テロに対してテロで報復するのがいいか悪いかは別問題です。私は賛成できませんけれども。しかし、そういう憎しみの連鎖をファルージャの虐殺はつくった。私は日本の自衛隊はこの派兵恒久法の下では、イギリス軍と同じになると思ってるんです。「日米安保体制」が「米英同盟」と同じようになります。世界の憲兵を名乗るアメリカに全面的に協力して「ポチ」と言われたブレア政権と同じ状態に置かれるんです。
「日米安保条約」の下では、日本の自衛隊はどこにでも出かけられるようにはなっていないんです。「極東」とはどこまでか?とか論議されたでしょ?しかし
「恒久法」は「日米安保条約」までも変質させられる。「憲法九条」は無きに等しくなります。そのことを「米英軍事同盟」に置き換えてイメージして下さい。アメリカが戦争をする所にイギリスのユニオンジャックあり。その脇に「日の丸」がある、と・・・。そういう状態を作りたい人たちがこの国にいる。

9条世界会議の意義
9条世界会議との関連の話をします。
イギリス軍は今世界の平和を願う人々の怨嗟の的になっています。恨みを買っているんですね。アメリカとイギリスは本当にとんでもない国だと・・・。5年前、全世界で1000万人以上の人たちがデモをやりました。日本でもパレードやデモが行われました。もしも派兵恒久法が通って、日本がアメリカ軍と一体となって戦争をするならば、世界中から日本はイギリスと同じように恨みの的になってしまう。
このところ、いろんなことを教えてもらう東京外語大の伊勢崎賢治さんという若い先生がいるんですが、彼はアフガニスタンで軍閥解体の仕事をしたのです。国連の仕事として日本人の伊勢崎さんがやるんです。そうして成功するんです。現在のアフガンをみれば、そう単純な問題ではないと彼も言いますが、其れはさて置き、軍閥は武器を出し、大砲などを取り上げるのに一時成功する。丸腰の日本人の彼が責任者になったチームの仕事が何故成功したかと考えると彼は「美しき誤解があった」と言うんですね。アフガンの人たちは日本人をズーッと誤解していたと。「憲法9条がある国」ということを知っている人が結構多い。あるいはヒロシマ、ナガサキの被害をアメリカから受けた国、悲惨な経験をした国として知っている。そういう国がアジアにあって平和を願っているということを知っている。「おお、日本人か」といって受け入れてくれるそうです。これを「美しき誤解」と伊勢崎さんは言うわけです。受け入れてくれている時に、日本は給油しているわけでしょう。イラクで人質になった3人の若者も「イラクの人たちは日本人に対して親近感を持っている」と言っていました。日本のボランテアの人たちは反政府勢力から攻撃を受けることはなかったんです。最近、実は日本もアメリカの戦争を手伝っているとわかって、ボランテアの人たちがやりにくくなっています。ペシャワール会の中村医師のような人々、薬を届けたいと考えている若者は「自衛隊よ来ないでくれ」と言います。そういう人たちが活動がし難くなります。不戦の憲法を持つ国が世界何位の軍隊を持っているのか。持っているだけでなくそれをアメリカと一緒に出してくるのかと。
「9条世界会議」の非常に大事な意味がここにあると思っています。
この5月4日、5日、6日と幕張メッセで「9条世界会議」が開かれます。
これは、2年半ほどまえから、ピースボードの若い人たちと夢を語ることから始まったのです。目前にせまって、「なんとか成功させたい」と若いボランテアの人たちと頑張っています。

私なりには、この「恒久法」との関連で、日本が世界から「平和の敵」と見られる道を選ぶのか、日本の市民は憲法9条を守り生かしたいと考え世界の平和を願う人々と一緒に討論する。その会議を成功させたい。この時期に「9条世界会議」が果たす役割は大きいと考えています。「憲法9条」は夢、理想でもあります。この戦争の時代に。またこの国をどうするのか、目標でもあります。

1999年にオランダのハーグで1万人くらいの人々が世界各地から集まって世界の平和実現にむかってどうするかと言う大討論集会をやりました。そこで10項のアジェンダというのが出されました。その第1番が「日本国憲法の第9条」です。1999年オランダのハーグで、世界の平和を願う人々が「日本国憲法9条の価値についてもう一回これを大事にして、世界各国政府が9条のような考え方を取り入れるように、平和を願う市民は頑張ろうではないか」と目標の第1番目に掲げたのです。その時のリーダーがアメリカのコーラ・ワイスです。彼女が今回、基調報告をします。それから2006年にカナダのバンクーバーで「世界平和フォーラム」が開かれました。ここでも「日本国憲法9条の価値を確認、これを広め世界のものにして行こうではないか」と話し合われたのです。この時、カナダの市会議員だったエレン・ウッズワースという人も来ます。(5日の「女性のシンポジウム」)。このように、世界の平和運動のなかで日本の憲法9条の考え方「戦争では平和はつくれない」と言う考え方を潮流にしようと動いています。9条はもう世界のものになりつつあります。大規模な国際会議は容易ではありませんが成功させたいと考えています。プログラムを見て、みなさまも、幕張メッセのオヒザモトですからご参加ください。そうして、日本の市民は改憲の動きに抵抗し、9条を守って生かす道を選ぶと明らかにして、宣言したいのです。

ボリビアという国があります。安倍さんの時にボリビアの新しい大統領が来て首脳会談をしました。その時にボリビアの憲法に日本の9条のような条項を入れたいと言いました。新聞に小ちゃく載っていました。5月4日に「ボリビアは国際紛争を武力により解決しない」という条項を入れた新しい憲法を採択するそうです。ボリビアには「外国軍隊の基地を置かせない」とも書いてありました。平和憲法は現実的ではないのではないか、日本だけじゃないか、いやコスタリカがある、そして、27カ国くらいの平和憲法を持つ国を挙げていましたが、ボリビアがそれに加わると言っているわけです。私はこのことに確信を持った方がいいと思います。中南米での大事な流れです。
幕張メッセで開かれる「9条世界会議」は世界史的に考えて価値のある会議です。今日、「若葉・九条の会」のみなさんが「9条世界会議」のプレイベントとしてこのような機会を作ってくださったことをありがたいと思っています。こういう、1つひとつの力を集めて、幕張の世界会議を成功させたいと思って
います。私たちは外国の人の力を借りて9条改憲阻止をやろうなどとは考えていません。志はもっと高いところにあります。
この世界会議は、世界の中で平和憲法9条の価値というものをお互いに市民が確認をして、それぞれの国で、地域で活かして行く集会です。

最後にこのような9条世界会議を構想しつつ
私たちの課題について話します
最近「改憲議員同盟」というのが総会をやりました。これは、正式には「新憲法制定議員同盟」といいます。これが3月4日に総会をやりました。この同盟の会長は中曽根康弘さんです。この「改憲議員同盟(略称)」は、昔は「自主憲法制定議員同盟」と言っていました。1955年に出来ています。誰たちがやったか。あの岸信介さんたちです。この人たちは毎年5月3日頃になると、九段会館などで「自主憲法制定だ」という集会をやっていました。あんまり集まりませんでした。これは、超右派なので(政府関係がやる改憲派の集会がもう一つあった)。これは岸さんが亡くなってから、事実上開店休業状態でした。それを、昨年ですけれども、ちょうど安倍さんが頑張ってた頃ですね、中曽根康弘さんが改憲の流れに乗ろうと復活させたのです。それで、自分が会長になった。
これが今年の3月に総会をやりました。これの役員(顧問)に鳩山由紀夫さんが入ったんです。羽田孜さんも顧問に誘われたが病気を理由に断ったそうです。
それから前原誠司(民主党元代表)が副会長になりました。ですから、以前隅っこの方でやっていた超右派にこういう人たちが乗っけられたと言っていいでしょう。なんでそうなったか聞いてみたんですが、中曽根さんが直接電話したそうです。なかなか断れないんだそうです。総会当日は参加しなかったそうですが、鳩山さんは役員名簿に載っています。
顧問:鳩山由紀夫(衆・民、新任)、伊吹文明(衆・自、新任)、亀井静香(衆・国、新任)、安倍晋三(衆・自、新任)、谷垣禎一(衆・自、新任)、副会長:前原誠司(衆・民、新任)、渡部英央(参・民、新任)などなど。

これは怖いと思います。超右派の動きに対して民主党の一角が参加をして役員になるというのは・・・。まだ他にも15人位の民主党の議員が参加しています。こういう動きが福田内閣の下で始まっていることに注目をして頂きたい。この総会で運動方針はプリントで出なかった。運動方針の演説をしたのは愛知和男という人です。私はこの愛知和男には多少因縁があります。憲法調査会に私が公述人で呼ばれた時、質問に立ったのが愛知和男という人物です。「高田さんは憲法改正に賛成ですか、反対ですか」と言うから「反対です」というと、「反対の人の意見を聞いてもしょうがないから質問は省略します」と言ったのです。呼んでおいて、ひどい奴です。反対の意見も賛成の意見も聞くために公聴会というのはあるわけでしょう。一度落選して復活した人ですが、ゴリゴリの超右派です。その愛知和男が総会の運動方針演説のなかで、なぜか「九条の会」に触れている。「近頃、九条の会というのがあって、全国隅々に九条の会をいっぱい組織しているそうだ。私たちの目標を達成するためにはこの九条の会に負けないように、私たちも草の根でこういう運動をつくらなければいけない」と・・・。

この前「九条の会」の講演会で澤地久枝さんは「そういうことを言うなら貴方は国会議員を辞めてから言いなさい。国会議員を返上して一市民に戻ってやりなさい」と言ってやりたいといいましたがそうですよね。しかし「九条の会」にこういう敵愾心を燃やしているのは間違いないんです。安倍政権がひっくり返って、改憲の運動が勢いを無くした。もう一回盛り上げたいとして、鳩山さんなんかを引き込んで、草の根で右翼を組織したいと考えているようです。ことさらに、この動きの危険性を大きく言うつもりはありません。自民党の中でもまだまだ少数派です。しかし賛同した議員の数は衆議院の過半数を超えています。賛同署名を取ったんです。公明党からも15人くらい賛同しました。だからこれは、侮るわけにはいかないのです。明文改憲を狙っている人たちはこんなに一生懸命なって「九条の会」に対抗しながらやっているということを報告しておきたいのです。
最後の最後にもう1つ、今、国会の中で「憲法審査会」という問題があります。これは、去年(2007年)の5月にできた「改憲手続法」・・・国民投票を2010年からはいつでもやることが出来るという法律・・・を去年安倍さんは強行採決したわけですけれども、この時に その準備のために(憲法改悪のための国民投票をやるには)は、まず「改憲案」をつくらなければならないわけですが、その<案>を作る機関が必要なんです。そのために「改憲手続法」には、「憲法審査会」を置くとなっている。それはどうなっているかというと、法律(改憲手続法)は5月(2007年)に通りましたから、「次の国会から設置する」となっています。ですから 秋の臨時国会(安倍さんが倒れた)に自動的に「憲法審査会」が出来るはずでしたが、しかし今、無いんです。これは、国会で言う<ハコだけができた>という状態です。「憲法審査会」を作るには「審査会」をどうやって運営するかという運営規定のようなものが必要ですし委員の推薦も必要です。ところが、<運営規定案>を与党が出したのですが野党がその審議に応じていません。「委員を出してください」と言っていますが、野党は出していません。「もっと審議を尽くせと言ったのに、強行採決をした。                                 
まして、参議院では18項目もの付帯決議をつけたという無様な法律ではないか」と・・・。「問題大有りの法案なのだ、強行採決で通ったからといって、応じられない」と野党は結束して反対しています。これが、あの人たちには困るんですよ。読売新聞などは社説で「憲法審査会」を即時始動させよ!と書いています。「改憲手続法」が出来ているのに「審査会」をつくらないのは、国会が法律違反をやっているという理屈です。野党はダダッ子に等しい。問題があるのなら「審査会」を動かしてこのなかで議論すればいいという、いつもながらのきれいごとです。だから出来るだけ早くこれを動かしたいのです。審査会のなかで「改憲案」を作りたいのです。いつから作れるかというと、「2010年から作っていい」となっています。先ほど申しました「改憲議員同盟」がこれと関連してきます。中曽根康弘というのは、こういうことをやっぱり一生懸命考えているんです。この「憲法審査会」を動かすためには野党を巻き込まないことにはどうにもならない。だからなんとしても野党の一部を取り込んで「審査会」を動かしたいというのが、中曽根さんたちの狙いです。
このことを、私たちは警戒をしておかなければいけない。案外ドタバタと話し合いでこういう機関が動いてしまうことがあるんです。いつも公開でやってくれるわけではなく、与野党幹事長会談とかで、「あんまり全部喧嘩していないで、たまには協力するのもあっていいか」とかで、ドタバタッといく可能性もあるんですね。ですから「憲法審査会」の「始動」に反対する署名運動なども含めて、声をあげることも必要です。

いろいろ ズ~っと一気にお話をしてきました。いろんな動きがあって、ヒトスジナワではいきません。しかし全体の世論は「憲法改悪はダメだ、とりわけ9条を変えてはいけない」が多数です。非常に根強い。どこまで徹底しているかは議論がありますが、戦後の民主主義のなかで、平和を願う声は根強い、これが改憲派にとっての大きな障害物です。これを何とかして潰したいと思っているのです。
「9条世界会議」の中心になっている人たちは、本当に若い人たちです。若い人たちが一生懸命「憲法9条」について考えています。
「九条の会」の会合にいくと「高田さん、九条の会は年寄りばっかりだ」とよく言われますが、今、「9条世界会議にボランテイアとして手伝いたい」と100人以上の学生が言って来ています。私たち年配の者は無理に若い人たちに理解してもらおうといろんな言葉を考えたりしないでいい、私たちがこの9条をどれだけ大切に思っているか、どうやって守っていくか、闘いと活動を示すことが結果として理解してくれることになると思います。「若い人を入れなきゃ」も大事かもしれないけれども、同世代で話が通じる人々もいっぱいいるでしょう。そういう人たちに「9条世界会議」の呼びかけもして、「派兵恒久法」の問題も話して下さい。父母、祖父母の活動を見て、若い人たちも行動を起こしてくれる。東京では、学生の9条ネットワークもできてきましたし。イラク戦争が起きたとき(5年前)東京で突如5万人のデモが起きました。それまで、年配者は「今、若者はどこへ行った」と嘆いていましたが・・・・・。
「9条世界会議」にも大勢の若者が参加しています。そういう人たちが9条の問題を自分の問題として立ち上がる時が来ると信じています。あんまり心配せずに,私たちは私たちの出来ることをしていきましょう。今日はお休みのところ、こういう話を聞いていただき本当にありがとうございました。

“国民投票法”の国会成立にあたって

若葉・九条の会世話人会

5月14日「日本国憲法の改正手続に関する法律」(通称、国民投票法)が参議院本会議において自民党・公明党のみの賛成で可決・成立しました。
この法律が実際に施行されるのは3年後の2010年で、それまでは凍結され、憲法改正原案そのものの提出・審査はできません。しかし、次の国会(参議院選挙後に臨時国会が開催されればこの夏)から衆参両院に設置される「憲法審査会」において、憲法調査という名目で、3年間の凍結が明けるのを待たず、憲法改正原案の骨子・要綱案の作成など実質的な憲法改正論議は始められる可能性があります。
安倍首相は5年以内に憲法を「改正」すると明言し、それを受けて自由民主党は、4年-5年後(2011-12年)憲法改正の国民投票を実施することを想定し、それまでの日程表を作成していると報道されています。中川秀直自民党幹事長は「今度の参議院選挙で選出される参議院議員は、任期6年間の間に必ず新憲法発議にかかわることになる」と語り、今年7月の参議院選挙の改憲日程における重大な位置付けを強調しています。
いよいよ、戦後米ソ冷戦の開始とともに始まった、憲法第九条(戦争の放棄、戦力不保持、交戦権否認)を廃棄し、米軍と一体となって戦争が出来る軍隊を持つようにというアメリカの執拗な要請にもかかわらず、施行以来60年間堅持し今日の日本の平和的繁栄の基礎となってきた日本国憲法、特に第9条の改定が具体的な日程に上ってきました。

わたしたち「若葉・九条の会」は、“国民投票法”の国会成立という事実を厳粛に受け止め、安倍首相や自民党執行部などが目指す「憲法九条を変え、日本を米軍と肩をならべて戦うことができる国にする」ことに反対し、日本国憲法とりわけ第九条を守るために一層粘り強く運動を展開していく決意を改めて表明します。

また、今国会で成立した“国民投票法”が、国会論議中に次々と明らかになってきたように、国のあり方を決める根本法規である憲法を“変えるか、変えないか”正々堂々と国民的論議することから逃げ、自由な国民投票運動を意図的に制限しようとする重大な欠陥を持っています。憲法改正原案の提出・審査だけでなく、日本国憲法の改正手続に係る法律案を提出するために次国会で設置される憲法審査会は、今国会で成立した“国民投票法”の附則および付帯決議で提起された諸課題を始め以下に延べるような、この法律が持つ国民主権や民主主義に反する条項を見直し、主権者である国民が自由に国民投票運動に参加できる法律に変えるための審議に集中することを要求します。

●最短60日と短すぎる発議から投票までの期間
憲法改正案が発議されてから60日以降180日以内に国会が議決した期日に国民投票を実施する(法律第二条)ことになっており、最短60日も可能である。憲法改正案の内容が、国民の中にあまねく周知徹底するためには、発議から投票までの期間が短すぎると考えられます。

●最低投票率の規定が無く、2-3割の賛成で憲法が改正される可能性
国民投票が成立する最低投票率の規定がなく、投票総数の過半数で憲法改正が成立します(法律第九十八条第2項)。投票総数には白票が含まれず、場合によっては2-3割の国民の賛成で憲法改定が行われる可能性があります。住民投票は有権者の過半数が住民投票成立条件となっています。憲法改正に相応しい最低投票率を設定すべきです。

●公務員・教育者の自由な国民投票運動への参加の制限
公務員および教育者の国民投票運動への参加が「地位利用による国民運動の禁止」という形で制限されています(法律第百三条)。なにが「地位利用」にあたるか明確な規定も無く幾らでも意図的な適用ができ、行政処分の対象になります。約400万人の公務員、約130万人の教育者の、本来日本国民であれば誰でも似保障されるべき、自由な国民投票運動への参加が大きく制限されることになります。法律第百三条の廃止を要求します。

●公務員の公務員法による政治的行為の制限
公務員は、国家公務員法、地方公務員法により政治的行為が制限されています。公務員が自由に国民投票運動に参加するためには、例外措置を法律で定める必要があります。例外措置については、自民・公明両党と民主党との間に合意が成立していましたが、「これでは改憲阻止法になってしまう」という強い自民党内の反対で、見送られました。例外措置に関する条項を法律の中に設けることを要求します。

●無制限の有料広告放送により、金力によるマスメデイアの独占される可能性
現在の世論形成においてテレビ、ラジオをはじめとするマスメデイアは決定的に大きな影響力を持っています。法律際百五条では、国民投票実施日14日前までは、有料広告放送を無制限に認めています。財界や財界をバックとする与党と、私たち一般国民や野党では資金力において圧倒的に差があります。これでは、国民投票当日14日前までは、憲法改正の意見広告でマスメデイアが独占される可能性があります。国民投票運動の全期間中、有料広告放送を禁止にすることを要求します。

●一括発議、一括投票の可能性
法律第六章において、憲法改正原案の発議にあったては内容において関連する事項ごとに区分して行うものとするとなっていますが、関連する事項という表現が不明確であり、一括投票に近いものとなる可能性が排除されません。一括投票となると、賛成する部分と反対の部分が抱き合わせた発議になり、国民の判断が投票に正確に反映されない可能性が極めて大きいと考えられる。特に、部分的に賛成、部分的に反対と書いた投票、白票はすべて無効投票とされ投票総数に含まれず(法律第九十八条第2項)、投票総数が大幅に少なくなる可能性があります。また棄権者が大量に生じることも予想されます。発議は改正する各条ごとに行うようにすることを要求します。

●衆参両院協議会による両院の独立性の否定
法律第六章において、憲法改定原案について衆議院または参議院のどちらかが否決した時、両院協議会を求めることになっています。憲法第九十六条は憲法改正の発議には衆参両院それぞれにおいて三分の二の賛成が必要であると定めています。衆議院と参議院との独立性からみても、どちらかが否決すれば「憲法審査会」から提出された憲法改正原案を廃案にすべきです。憲法改正についての両院協議会は廃止することを要求します。

●憲法審査会における実質的な憲法改正論議が直ちに始まる可能性
法律第六章において、憲法改正原案のおよび日本国憲法の改正手続に係る法律案を提出する「憲法審査会」が、現在衆参両院に設置されている「憲法調査会」に替って設置されました。法律補則第一条において、法律自体は公布から3年後に施行するが、「憲法審査会」は公布の以降初めて召集される国会の召集の日から施行すると定めています。憲法改正原案そのもの提出・審査は3年後までできません(法律附則第四条)が、憲法調査という名目で憲法改正の骨子案・要綱案の作成など実質的な憲法改正論議は直ぐにでも始められる可能性があります。そうなれば、公明党などの「憲法第九六条に定められた憲法改正のための手続きを定めるだけだ」という主張は成り立ちません。「憲法審査会」は、この法律が持つ国民主権や民主主義に反する条項を見直し、主権者である国民が自由に国民投票運動に参加できる法律に変えるための審議に集中することを要求します。