「若葉・九条の会」 ニュースレター  第19号
(2008年4月12日発行) 発行/「若葉・九条の会」広報部
世論の動向:2008年4月8日付の読売新聞による「憲法」世論調査によれば、改憲反対が15年ぶりに賛成を上回りました。草の根の「九条の会」の増加にともない反対が増えています。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」ことを実感するニュースでした。
「9条世界会議」プレ講演会
兼「若葉・九条の会」総会開始
とき:2008年3月23日 ところ:千葉市若葉区みつわ台公民館
演者:高田 健 9条世界会議日本実行委員  全国「九条の会」事務局員
憲法9条のいまと九条の会運動 ~~日本の9条から世界の9条へ~~
自衛隊海外派兵恒久法と憲法9条をめぐる最近の動き
今、花が沢山、咲いていて、いい季節ですね。しかしこののどかな日にも、日本から派遣されている自衛隊は戦争をやっているということを私たちは忘れてはならないと思います。私たちの税金で派遣されて、爆弾を落とすその手伝いをイラクとアフガンの戦線で今日もやっているということを。ブッシュが戦争を始める理由にした<①フセインはアルカイーダとつながっている、②大量破壊兵器を持っている>はウソだった。やられる前に叩くという予防戦争の発想は、国際的に大変なことです。この戦争で殺されてしまった人びとはどうなるんだと思いますね。その数はわかりません。15万人という人、40数万人という人、わかんないんです。その片棒を私たちの国がかついでいるんです。この憲法九条を持つ国が。このことを最初にお伝えしたかったのです。昨日デモをしたものですから。
福田政権はどのような政権か
安倍さんの政権はちょっと硬い用語で言うと「新自由主義」と「新国家主義」が結合した政権だといわれました。 教育基本法なんかも非常に乱暴に変えてしまった。しかしもたなかった。みんなから見て、どうもこの政権はあぶないと。ですから去年の参議院選挙でこれ以上政権を続けさせるのはいやだといろんな人がいろんなこと考えて、野党に投票したんですね。その結果、安部政権は倒れた。これは、日本の有権者の賢明な選択だったなーと思います。全国で沢山の「九条の会」が出来てきた背景にはこうした安倍さんの動きへの危機感もあったと思います。今、市民が立ち上がらなければ大変だと。全国6,800カ所以上に「九条の会」ができました。いまも次々と出来ています。
世論調査でも<憲法九条は変えないほうがいい>という声が多数になってきました。安倍さんの政権、或いはその前の小泉さんの政権の下で、「この国は危ない方に行こうとしている」と多くの人が考えた。<九条は守らなければいけない。この憲法を変えたら大変になるよ>そういう声が多くなったんですね。そういうみんなの気持ちの反映なんです。去年の夏の参議院選挙の結果は。
その後、登場したのが福田さんですね。1月の施政方針演説のなかでも「改憲」という言葉はほとんど出てきません。そうすると福田さんは安倍さんから見て<ハト派>なんでしょうか。日本の政権はタカ派からハト派になったのかな?と思ってしまうような政権なんです。
福田政権を見る場合、彼が、これまでやってきたことを見る必要があります。
①自民党の「新憲法草案」の「9条の安全保障に関する小委員会」の責任者だったんです。だから今の自民党の新憲法草案は九条を変えてしまうという案なんですが、これを作った責任者は福田さんです。小委員長だった。今の9条2項を全部書き換えて日本は戦争ができるように自衛軍を持つようにしようと。そして自衛軍の仕事は3つだと書いてある。この新憲法草案に。1つは国防(国を侵略から守る)もう1つは、はっきりと、海外で平和維持のために国際協力のための活動をする軍隊である。それからもう一つ、国内の治安を守る。治安維持のためにこの軍隊は出動すると。昔を思い出しますね。警察では手に余るような民衆の市民運動などが起きたときには、この軍隊が出てくると言うんです。そういう草案を福田さんは書いた人なんです。これは絶対に見ておかなければいけない。
それからもう一つ、あの人は小泉さんの時の前半の官房長官です。その時に福田さんは「派兵恒久法」という問題について検討させた。研究者をあつめて。自衛隊を恒に外国に出しで活動出来るようにするにはどういう法律を作ったら良いかを研究させたんです。2002年の12月に諮問機関に報告書を出させています。この「派兵恒久法」についての答申案は福田さんが官房長官を辞めた時点で<お蔵入り>になりました。今度、自分が首相になったからこれを蔵からひっぱり出す機会が来たと思っているんです。今、やろうとしているんです。
もう一つ、福田内閣は、超タカ派の安倍内閣のメンバーをそのまま引き継いでいる。この6ヶ月何んだかわからないことを福田さんはやっているように見えますが、いまあげた3つの点だけを見ても、そう生半可な内閣ではないのです。今、福田内閣支持率がどんどん下がっています。解散も出来ない。私は福田内閣のこの6ヶ月間の最大の罪状は、自衛隊をインド洋北部に派遣するという新法を採択したことだと思います。せっかく11月に、今までのテロ特措法の期限が切れて自衛隊が帰ってきた。4ヶ月自衛隊はインド洋でアメリカの戦争の手伝いをしないですんだんです。しかし1月にこの新法を作って、強引なやりかたで衆議院で決めて、参議院で否決されて、否決されたのを、また衆議院に戻して、三分の二だからと衆議院が優先だと憲法59条を使って、これでやったわけです。とんでもないことをやったわけです。これが福田さんのこの半年の罪状です。
憲法九条があるからそう簡単に戦争の手伝いは認められない。だから目的を限定して、期間を限定して特別に立法化するという主旨で特措法というのを作ります。今度の給油新法も特措法で期限は1年です。1年と言うことは間もなく、期限が来る。来年の1月までということは、今年の秋ごろから、問題になるということです。私たちは、もう一度このことを考え議論するチャンスがあるわけです。延長するのか。認めるのか。認めないのか。700億円ですよ。使われる税金は。これだけを使ってアフガンの人たちを爆撃する手伝いを、もう1回続けるのかと。
2001年、アメリカが今からアフガンを攻めるので日本も手伝えと言ったわけです。それからイラクを攻める時も、今からイラクを攻撃するから日本は手伝えと言ったわけです。そういわれるたびに「特措法」を作らなければならない。
アメリカが戦争をするたびに、日本の政府は「特措法」を作らなければならないのです。憲法9条違反ではないかと私たちも云うわけです。だから、政府与党にとっては、「特措法」というのは困ったものなんです。それで福田さんが考えているのが、2002年の時から考えた「恒久法」というやつなんです。あるいは「一般法」なんていう。「特別」に対する「一般」、「時限」に対する「恒久」です。
いつでも、何処へでも、自由に自衛隊を出せる法律があった、らどんなに便利だろうと、ずーっと考えてきたわけです。「恒久法」に対する欲望は政府与党のなかにずーっとありました。しかしいくらなんでもそう簡単にはいかない。文字通り「九条あって無きが如し」になります。こんなのが出来ちゃったら大変ですよ。福田さんはこういうのを作りたいと思っているんですよ。これが今私たちの目の前にある大変な問題なんです。
私は、今日みなさんに考えてほしいのは今年、「平和の問題・憲法九条の問題」に関係して最大の政治問題はこの「恒久法」の問題だということです。問題にしなければいけない。このように、のどかな日に、日本の自衛隊が戦争をしていることが日常になることをわれわれが選択させられてしまう。私たちは、いそいで、この「恒久法」の中身について勉強して市民としてNO!を言っていかないといけないんです。「九条の会」に集まっているみなさんには是非お願いしたいのです。私たちは本当に九条が大事だと思ってる。そしてこの九条の価値を、世界からも認められているこれを本当に大事にして、これを指針にして、この国が運営されていくように望んでいる。「恒久法」という変化球で「憲法九条」をなきものにしようとしていることを私たちは許すわけにいかないと思います。
実はこれの「案」はないのです。出来ていない。がある。それは どこにあるかと言うと2006年の夏に自民党の安保防衛小委員会というところで「国際平和協力法案」というのを作った。委員長は石破防衛大臣です。私たちはこの「石破試案」を見ることによって、ある程度どんなものを作りたがっているかわかります。レジュメに、いくつか特徴を書いておきました。
● 石破試案(06/8月)の問題点
▲米軍からの要請でも、さらに日本独自の判断でも派兵できる。▲国家間の戦争でなければ戦闘地域にも派兵できる。▲外国軍隊や類似の組織とも連携できる。▲現地で起こる危害・破壊行為を武器で予防・制止できる。▲警護者や基地・車両などへの侵略行為を武器で阻止できる。▲国連決議や旗国の同意があれば世界中で船舶を臨検できる。▲群衆が暴行・脅迫やその危険があるときは武器で鎮圧できる。   ・・・ 当日レジュメから
今、日本では、憲法の下で、戦闘地域には自衛隊は派遣できないことになっています。が、試案の表現は(暴動とかが発生する)おそれのあると認められた場合に、自衛隊はそこに参加できるというものです。行って治安維持活動をすると。
だから、イラクの人たちが「アメリカ軍出て行け」とデモをしている。怒っている。これは暴動になりそうだと自衛隊が判断したら、「暴動」を鎮圧することが出来るという法律なんです。一つひとつ見ていくと大変な法律案です。
このような石破試案が、たたき台になって早ければ今度の国会の最中に法案が出されるかもしれない。法案を出しても今度の国会で採択するのはおそらく不可能でしょう。そうすると継続審議ということになって9月ごろから臨時国会が開かれます。6月の国会は延長されません。サミットがありますから。秋の国会で法案を通したいと考えているでしょう。そんなことになったら、本当に大変です。私たちも、よほど今、がんばって勉強しないと・・・。どういう状態になるかということを想像して下さい。
イラクでの「ファルージャの虐殺」をご記憶でしょう。アメリカ軍がファルージャという町にゲリラが隠れていると言って、ファルージャの町を完全封鎖して誰れも町から逃げ出せないような状態にして総攻撃をかけた。病院でも、何でもやった。「ファルージャの大虐殺」です。これを助けたのがイギリス軍です。ブレア政権はアメリカ軍と一緒に、ファルージャに踏みこんだのです。イラクの人たちからものすごい怒りをかいました。日本の自衛隊はこの派兵恒久法の下では、イギリス軍と同じになると思います。「日米安保体制」が「米英同盟」と同じようになります。世界の憲兵を名乗るアメリカに全面的に協力して「ポチ」と言われたブレア政権と同じ状態に置かれるんです。「恒久法」は「日米安保条約」までも変質させられる。「憲法九条」は無きに等しくなります。アメリカが戦争をするところに、イギリスのユニオンジャックあり。その脇に「日の丸」がある。そういう状態を作りたい人たちがこの国にいる。
9条世界会議との関連の話をします。
イギリス軍は今世界の平和を願う人々の怨嗟の的になっています。恨みを買っています。アメリカとイギリスは本当にとんでもない国だと。5年前、全世界で1000万人以上の人たちがデモをやりました。日本でもパレードやデモが行われました。もしも派兵恒久法が通って、日本がアメリカ軍と一体となって戦争をするならば、イギリスと同じように世界中の恨みの的になってしまう。
このところ、いろんなことを教えてもらう東京外語大の伊勢崎賢治さんという若い先生がいるんですが、彼はアフガニスタンで軍閥解体の仕事をしたのです。国連の仕事として。(現在のアフガンをみれば、そう単純な問題ではないと彼も言いますが、其れはさておき)軍閥は武器を出し、大砲とか取り上げるのに一時、成功する。丸腰の日本人の彼が責任者になったチームの仕事が何故成功したかと考えると彼は「美しき誤解があった」と言うんですね。アフガンの人たちは日本人をズーッと誤解していたと。「憲法九条がある国」ということを知っている人が結構多い。あるいはヒロシマ、ナガサキの被害をアメリカから受けた国、悲惨な経験をした国として知っている。そういう国がアジアにあって平和を願っているということを知っている。「おお、日本人か」といって受け入れてくれるそうです。「美しき誤解」と伊勢崎さんは言うわけです。イラクの人たちは日本人に対して親近感を持っている。日本のボランテアの人たちは反政府勢力から攻撃を受けることはなかったんです。ペシャワール会の中村医師のような人々、薬を届けたいと考えているNPOの若者は「自衛隊よ来ないでくれ」といいます。そういう人たちが活動しにくくなります。不戦の憲法を持つ国が世界5位の軍隊を持っているのか。持っているだけでなく、それをアメリカと一緒に出してくるのか。と。「誤解」はバレつつあります。
「9条世界会議」の非常に大事な意味がここにあると思っています。
この5月4日、5日、6日と幕張メッセで「9条世界会議」が開かれます。
日本が、世界から「平和の敵」と見られる道を選ぶのか、日本の市民は憲法9条を守り生かしたいと考え世界の平和を願う人々と一緒に討論できる会議ができるのか、この時期に「9条世界会議」が果たす役割は大きいと考えています。「憲法九条」はこの戦争の時代に、夢・理想でもあります。
1999年、オランダのハーグで1万人位の人々が世界各地から集まって、<世界平和実現>にむかってどうするかという大討論集会をやりました。そこで10項目のアジェンダというのが出されました。
第1番目が「日本国憲法9条の価値についてもう1回大切さを確認して世界各国政府が、9条のような考え方を取り入れるように、平和を願う市民は頑張ろうではないか」という目標でした。
その時のリーダーがアメリカのコーラ・ワイスです。彼女が今回の9条世界会議で基調報告をします。それから2006年にカナダのバンクーバーで「世界平和フォーラム」が開かれました。ここでも「日本国憲法9条の価値を確認しこれを広め世界のものにして行こうではないか」と話し合われたのです。この時カナダの市会議員だったエレン・ウッズワースという人も来ます。(5日の「女性シンポジウム」)このように平和運動のなかで日本の憲法9条の考え方を世界の潮流にしようとしているのです。<武力で平和はつくれない>のです。9条はもう世界のものになりつつあります。
最後に日本の危険な政治的な動きについて「改憲議員同盟」についてもちゃんと見ておかなければならないことを付け加えます。(顧問:鳩山由紀夫、伊吹文明、亀井静香、安倍晋三、谷垣禎一、副会長:前原誠司、渡部英央 などなど)
以上、高田健さんの講演の要旨のみ纏めました(記録、文責:鎌倉)
高田健さんの講演を聞いて
※安倍内閣は前面に9条改憲を掲げたのに対し、福田内閣は自民党の参院選の敗北の結果(憲法9条への世論の支持率は高い)を踏まえてか、米国の要請に応えるため、1年以内の自衛隊派兵恒久法(一般法、9条なし崩し法)の制定と数年かけての明文改憲に意欲を燃やしている。
もともと新憲法草案の9条に関する案(自衛軍と国防、海外で平和のため派兵、治安を守るため・・)は、その小委員長である福田が書いたもので、超タカ派内閣の性格を変えてはいない。また、7000にも増えた9条の会を意識してか、改憲議員同盟の動きとして(会長中曽根)憲法審査会を作り、その中に野党の民主党(顧問:鳩山、副会長:前原誠司)が、入っているのも見逃せない。
国内はこのような状態でも、世界は日本に対して、唯一の被爆国日本が平和憲法9条を持っているので平和な国であると美しき誤解をしている。しかし、テロ特措法のごたごたで実態が見えベールがはがされつつある。また、9条を愛するボリビアの大統領は、ボリビア憲法へ、不戦反基地条項を導入し、コスタリカを始めコロンビア等の中南米諸国は、国際紛争を武力で解決しない方向に動き始めている。こんな今だから、日本は世界に向かって9条を輝かせようではないか。もはや国家レベルの平和を願う市民では
なく、世界レベルの平和を願う市民となって、大きなうねりを作ろう。これが、9条世界会議の歴史的意義だ。・・・・・・大まかな講演の内容である。
※高田健さんの講演は憲法9条の今を知る上でとても有意義であったと思う。しかし、九条を守るもう一つの視点として私は、日米同盟関係の見直しを掲げたい。もともと9条は、日本が戦争を出来ないようアメリカが与えたにもかかわらず、御都合主義のアメリカの戦略が変わって日本も同盟国として戦争に協力して欲しいが、戦争の出来ない憲法9条が邪魔になっているのではないか?
戦争をしないという9条は理想ではなく、簡単にアメリカとともに戦争を出来ない現実を作った。日米同盟のもと、9条を変えてアメリカと一緒に戦争をする国になりたくないなら、もう一度日米軍事同盟を検討すべき時が来ているのではないか?別にアメリカと対立するという事でなく、9条を変えないで、アメリカから自立し、友好関係を保ちながら、平和運動の戦略として、9条の考えを世界に広げ世界平和に貢献する。アメリカに服従する事が愛国心とは思えない。むしろ世界に9条を広げて世界の人々から愛される日本になることが、平和につながると思う。
(戦争を知らない主婦 54歳)
<お出かけ情報>
九条の会・千葉医療者の会結成の集い
日時:4月27日(日)午後2時から
場所:プラザ菜の花大会議室
主催:九条の会・千葉医療者の会
講演:香山リカさん(精神科医)
講演と和太鼓の集い
日時:5月3日(土) 午後1時〜
場所:千葉市民文化交流センター
講師: 山川建夫さん
演題:「生きるために考えようー
平和と環境を」
和太鼓演奏 市原山火太鼓
参加費:500円
主催 千葉県憲法集会実行委員会
5.3千葉県憲法集会
日時:5月3日(土)午後1時30分開会
場所:千葉市生涯学習センター
講師: 浅井基文さん
平和の歌声 千葉うたごえ9条の会
共催:千葉県憲法会議・憲法改悪反対千葉県共同センター
生かそう憲法 輝け9条憲法集会&パレード
日時:5月3日(土)午後1時30分〜
場所:日比谷公会堂
スピーチ:湯川れい子、福島みずほ、志位和夫, アン・ライト
15時30分から銀座パレード
主催 5・3憲法集会実行委員会
新着図書の紹介
『日本の軍事費—巨大な無駄と利権』安保破棄中央実行委員会編集/発行。
九条2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と誓った国が5兆円以上の税金を軍事費につぎ込んでいる。これは世界第5位。どうしてそのような構造になったか?是非一読を。
『イマジン9 想像してごらん 戦争のない世界を』成瀬政博イラスト、イマジン9プロジェクト著。世界が9条を選んだら、どんな素敵な世の中になるでしょう。子供達と一緒に読んでもほんわか楽しい本です。
カンパのお願い
会の活動を支えるためにカンパ(1口千円)をよろしくお願い致します。
振替口座00130−3−723858「若葉・九条の会」

「若葉・九条の会」ニュースレター 第19号
(2008年4月12日発行)

世論の動向:2008年4月8日付の読売新聞による「憲法」世論調査によれば、改憲反対が15年ぶりに賛成を上回りました。草の根の「九条の会」の増加にともない反対が増えています。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」ことを実感するニュースでした。
「9条世界会議」プレ講演会 兼「若葉・九条の会」総会開始
とき:2008年3月23日 
ところ:千葉市若葉区みつわ台公民館
演者:高田 健 9条世界会議日本実行委員  全国「九条の会」事務局員
憲法9条のいまと九条の会運動 ~~日本の9条から世界の9条へ~~
自衛隊海外派兵恒久法と憲法9条をめぐる最近の動き

今、花が沢山、咲いていて、いい季節ですね。しかしこののどかな日にも、日本から派遣されている自衛隊は戦争をやっているということを私たちは忘れてはならないと思います。私たちの税金で派遣されて、爆弾を落とすその手伝いをイラクとアフガンの戦線で今日もやっているということを。ブッシュが戦争を始める理由にした<①フセインはアルカイーダとつながっている、②大量破壊兵器を持っている>はウソだった。やられる前に叩くという予防戦争の発想は、国際的に大変なことです。この戦争で殺されてしまった人びとはどうなるんだと思いますね。その数はわかりません。15万人という人、40数万人という人、わかんないんです。その片棒を私たちの国がかついでいるんです。この憲法九条を持つ国が。このことを最初にお伝えしたかったのです。昨日デモをしたものですから。
福田政権はどのような政権か
安倍さんの政権はちょっと硬い用語で言うと「新自由主義」と「新国家主義」が結合した政権だといわれました。 教育基本法なんかも非常に乱暴に変えてしまった。しかしもたなかった。みんなから見て、どうもこの政権はあぶないと。ですから去年の参議院選挙でこれ以上政権を続けさせるのはいやだといろんな人がいろんなこと考えて、野党に投票したんですね。その結果、安部政権は倒れた。これは、日本の有権者の賢明な選択だったなーと思います。全国で沢山の「九条の会」が出来てきた背景にはこうした安倍さんの動きへの危機感もあったと思います。今、市民が立ち上がらなければ大変だと。全国6,800カ所以上に「九条の会」ができました。いまも次々と出来ています。 
世論調査でも<憲法九条は変えないほうがいい>という声が多数になってきました。安倍さんの政権、或いはその前の小泉さんの政権の下で、「この国は危ない方に行こうとしている」と多くの人が考えた。<九条は守らなければいけない。この憲法を変えたら大変になるよ>そういう声が多くなったんですね。そういうみんなの気持ちの反映なんです。去年の夏の参議院選挙の結果は。 
その後、登場したのが福田さんですね。1月の施政方針演説のなかでも「改憲」という言葉はほとんど出てきません。そうすると福田さんは安倍さんから見て<ハト派>なんでしょうか。日本の政権はタカ派からハト派になったのかな?と思ってしまうような政権なんです。
福田政権を見る場合、彼が、これまでやってきたことを見る必要があります。①自民党の「新憲法草案」の「9条の安全保障に関する小委員会」の責任者だったんです。だから今の自民党の新憲法草案は九条を変えてしまうという案なんですが、これを作った責任者は福田さんです。小委員長だった。今の9条2項を全部書き換えて日本は戦争ができるように自衛軍を持つようにしようと。そして自衛軍の仕事は3つだと書いてある。この新憲法草案に。1つは国防(国を侵略から守る)もう1つは、はっきりと、海外で平和維持のために国際協力のための活動をする軍隊である。それからもう一つ、国内の治安を守る。治安維持のためにこの軍隊は出動すると。昔を思い出しますね。警察では手に余るような民衆の市民運動などが起きたときには、この軍隊が出てくると言うんです。そういう草案を福田さんは書いた人なんです。これは絶対に見ておかなければいけない。
それからもう一つ、あの人は小泉さんの時の前半の官房長官です。その時に福田さんは「派兵恒久法」という問題について検討させた。研究者をあつめて。自衛隊を恒に外国に出しで活動出来るようにするにはどういう法律を作ったら良いかを研究させたんです。2002年の12月に諮問機関に報告書を出させています。この「派兵恒久法」についての答申案は福田さんが官房長官を辞めた時点で<お蔵入り>になりました。今度、自分が首相になったからこれを蔵からひっぱり出す機会が来たと思っているんです。今、やろうとしているんです。
もう一つ、福田内閣は、超タカ派の安倍内閣のメンバーをそのまま引き継いでいる。この6ヶ月何んだかわからないことを福田さんはやっているように見えますが、いまあげた3つの点だけを見ても、そう生半可な内閣ではないのです。今、福田内閣支持率がどんどん下がっています。解散も出来ない。私は福田内閣のこの6ヶ月間の最大の罪状は、自衛隊をインド洋北部に派遣するという新法を採択したことだと思います。せっかく11月に、今までのテロ特措法の期限が切れて自衛隊が帰ってきた。4ヶ月自衛隊はインド洋でアメリカの戦争の手伝いをしないですんだんです。しかし1月にこの新法を作って、強引なやりかたで衆議院で決めて、参議院で否決されて、否決されたのを、また衆議院に戻して、三分の二だからと衆議院が優先だと憲法59条を使って、これでやったわけです。とんでもないことをやったわけです。これが福田さんのこの半年の罪状です。
憲法九条があるからそう簡単に戦争の手伝いは認められない。だから目的を限定して、期間を限定して特別に立法化するという主旨で特措法というのを作ります。今度の給油新法も特措法で期限は1年です。1年と言うことは間もなく、期限が来る。来年の1月までということは、今年の秋ごろから、問題になるということです。私たちは、もう一度このことを考え議論するチャンスがあるわけです。延長するのか。認めるのか。認めないのか。700億円ですよ。使われる税金は。これだけを使ってアフガンの人たちを爆撃する手伝いを、もう1回続けるのかと。
2001年、アメリカが今からアフガンを攻めるので日本も手伝えと言ったわけです。それからイラクを攻める時も、今からイラクを攻撃するから日本は手伝えと言ったわけです。そういわれるたびに「特措法」を作らなければならない。アメリカが戦争をするたびに、日本の政府は「特措法」を作らなければならないのです。憲法9条違反ではないかと私たちも云うわけです。だから、政府与党にとっては、「特措法」というのは困ったものなんです。それで福田さんが考えているのが、2002年の時から考えた「恒久法」というやつなんです。あるいは「一般法」なんていう。「特別」に対する「一般」、「時限」に対する「恒久」です。
いつでも、何処へでも、自由に自衛隊を出せる法律があった、らどんなに便利だろうと、ずーっと考えてきたわけです。「恒久法」に対する欲望は政府与党のなかにずーっとありました。しかしいくらなんでもそう簡単にはいかない。文字通り「九条あって無きが如し」になります。こんなのが出来ちゃったら大変ですよ。福田さんはこういうのを作りたいと思っているんですよ。これが今私たちの目の前にある大変な問題なんです。
私は、今日みなさんに考えてほしいのは今年、「平和の問題・憲法九条の問題」に関係して最大の政治問題はこの「恒久法」の問題だということです。問題にしなければいけない。このように、のどかな日に、日本の自衛隊が戦争をしていることが日常になることをわれわれが選択させられてしまう。私たちは、いそいで、この「恒久法」の中身について勉強して市民としてNO!を言っていかないといけないんです。「九条の会」に集まっているみなさんには是非お願いしたいのです。私たちは本当に九条が大事だと思ってる。そしてこの九条の価値を、世界からも認められているこれを本当に大事にして、これを指針にして、この国が運営されていくように望んでいる。「恒久法」という変化球で「憲法九条」をなきものにしようとしていることを私たちは許すわけにいかないと思います。 
実はこれの「案」はないのです。出来ていない。がある。それは どこにあるかと言うと2006年の夏に自民党の安保防衛小委員会というところで「国際平和協力法案」というのを作った。委員長は石破防衛大臣です。私たちはこの「石破試案」を見ることによって、ある程度どんなものを作りたがっているかわかります。レジュメに、いくつか特徴を書いておきました。
● 石破試案(06/8月)の問題点
▲米軍からの要請でも、さらに日本独自の判断でも派兵できる。▲国家間の戦争でなければ戦闘地域にも派兵できる。▲外国軍隊や類似の組織とも連携できる。▲現地で起こる危害・破壊行為を武器で予防・制止できる。▲警護者や基地・車両などへの侵略行為を武器で阻止できる。▲国連決議や旗国の同意があれば世界中で船舶を臨検できる。▲群衆が暴行・脅迫やその危険があるときは武器で鎮圧できる。・・・ 当日レジュメから
今、日本では、憲法の下で、戦闘地域には自衛隊は派遣できないことになっています。が、試案の表現は(暴動とかが発生する)おそれのあると認められた場合に、自衛隊はそこに参加できるというものです。行って治安維持活動をすると。だから、イラクの人たちが「アメリカ軍出て行け」とデモをしている。怒っている。これは暴動になりそうだと自衛隊が判断したら、「暴動」を鎮圧することが出来るという法律なんです。一つひとつ見ていくと大変な法律案です。  このような石破試案が、たたき台になって早ければ今度の国会の最中に法案が出されるかもしれない。法案を出しても今度の国会で採択するのはおそらく不可能でしょう。そうすると継続審議ということになって9月ごろから臨時国会が開かれます。6月の国会は延長されません。サミットがありますから。秋の国会で法案を通したいと考えているでしょう。そんなことになったら、本当に大変です。私たちも、よほど今、がんばって勉強しないと・・・。どういう状態になるかということを想像して下さい。 
イラクでの「ファルージャの虐殺」をご記憶でしょう。アメリカ軍がファルージャという町にゲリラが隠れていると言って、ファルージャの町を完全封鎖して誰れも町から逃げ出せないような状態にして総攻撃をかけた。病院でも、何でもやった。「ファルージャの大虐殺」です。これを助けたのがイギリス軍です。ブレア政権はアメリカ軍と一緒に、ファルージャに踏みこんだのです。イラクの人たちからものすごい怒りをかいました。日本の自衛隊はこの派兵恒久法の下では、イギリス軍と同じになると思います。「日米安保体制」が「米英同盟」と同じようになります。世界の憲兵を名乗るアメリカに全面的に協力して「ポチ」と言われたブレア政権と同じ状態に置かれるんです。「恒久法」は「日米安保条約」までも変質させられる。「憲法九条」は無きに等しくなります。アメリカが戦争をするところに、イギリスのユニオンジャックあり。その脇に「日の丸」がある。そういう状態を作りたい人たちがこの国にいる。 
9条世界会議との関連の話をします。 
イギリス軍は今世界の平和を願う人々の怨嗟の的になっています。恨みを買っています。アメリカとイギリスは本当にとんでもない国だと。5年前、全世界で1000万人以上の人たちがデモをやりました。日本でもパレードやデモが行われました。もしも派兵恒久法が通って、日本がアメリカ軍と一体となって戦争をするならば、イギリスと同じように世界中の恨みの的になってしまう。 
このところ、いろんなことを教えてもらう東京外語大の伊勢崎賢治さんという若い先生がいるんですが、彼はアフガニスタンで軍閥解体の仕事をしたのです。国連の仕事として。(現在のアフガンをみれば、そう単純な問題ではないと彼も言いますが、其れはさておき)軍閥は武器を出し、大砲とか取り上げるのに一時、成功する。丸腰の日本人の彼が責任者になったチームの仕事が何故成功したかと考えると彼は「美しき誤解があった」と言うんですね。アフガンの人たちは日本人をズーッと誤解していたと。「憲法九条がある国」ということを知っている人が結構多い。あるいはヒロシマ、ナガサキの被害をアメリカから受けた国、悲惨な経験をした国として知っている。そういう国がアジアにあって平和を願っているということを知っている。「おお、日本人か」といって受け入れてくれるそうです。「美しき誤解」と伊勢崎さんは言うわけです。イラクの人たちは日本人に対して親近感を持っている。日本のボランテアの人たちは反政府勢力から攻撃を受けることはなかったんです。ペシャワール会の中村医師のような人々、薬を届けたいと考えているNPOの若者は「自衛隊よ来ないでくれ」といいます。そういう人たちが活動しにくくなります。不戦の憲法を持つ国が世界5位の軍隊を持っているのか。持っているだけでなく、それをアメリカと一緒に出してくるのか。と。「誤解」はバレつつあります。 
「9条世界会議」の非常に大事な意味がここにあると思っています。この5月4日、5日、6日と幕張メッセで「9条世界会議」が開かれます。日本が、世界から「平和の敵」と見られる道を選ぶのか、日本の市民は憲法9条を守り生かしたいと考え世界の平和を願う人々と一緒に討論できる会議ができるのか、この時期に「9条世界会議」が果たす役割は大きいと考えています。「憲法九条」はこの戦争の時代に、夢・理想でもあります。 
1999年、オランダのハーグで1万人位の人々が世界各地から集まって、<世界平和実現>にむかってどうするかという大討論集会をやりました。そこで10項目のアジェンダというのが出されました。第1番目が「日本国憲法9条の価値についてもう1回大切さを確認して世界各国政府が、9条のような考え方を取り入れるように、平和を願う市民は頑張ろうではないか」という目標でした。
その時のリーダーがアメリカのコーラ・ワイスです。彼女が今回の9条世界会議で基調報告をします。それから2006年にカナダのバンクーバーで「世界平和フォーラム」が開かれました。ここでも「日本国憲法9条の価値を確認しこれを広め世界のものにして行こうではないか」と話し合われたのです。この時カナダの市会議員だったエレン・ウッズワースという人も来ます。(5日の「女性シンポジウム」)このように平和運動のなかで日本の憲法9条の考え方を世界の潮流にしようとしているのです。<武力で平和はつくれない>のです。9条はもう世界のものになりつつあります。 最後に日本の危険な政治的な動きについて「改憲議員同盟」についてもちゃんと見ておかなければならないことを付け加えます。(顧問:鳩山由紀夫、伊吹文明、亀井静香、安倍晋三、谷垣禎一、副会長:前原誠司、渡部英央 などなど) 以上、高田健さんの講演の要旨のみ纏めました。                   (記録、文責:鎌倉)


高田健さんの講演を聞いて
安倍内閣は前面に9条改憲を掲げたのに対し、福田内閣は自民党の参院選の敗北の結果(憲法9条への世論の支持率は高い)を踏まえてか、米国の要請に応えるため、1年以内の自衛隊派兵恒久法(一般法、9条なし崩し法)の制定と数年かけての明文改憲に意欲を燃やしている。もともと新憲法草案の9条に関する案(自衛軍と国防、海外で平和のため派兵、治安を守るため・・)は、その小委員長である福田が書いたもので、超タカ派内閣の性格を変えてはいない。また、7,000にも増えた9条の会を意識してか、改憲議員同盟の動きとして(会長中曽根)憲法審査会を作り、その中に野党の民主党(顧問:鳩山、副会長:前原誠司)が、入っているのも見逃せない。 
国内はこのような状態でも、世界は日本に対して、唯一の被爆国日本が平和憲法9条を持っているので平和な国であると美しき誤解をしている。しかし、テロ特措法のごたごたで実態が見えベールがはがされつつある。また、9条を愛するボリビアの大統領は、ボリビア憲法へ、不戦反基地条項を導入し、コスタリカを始めコロンビア等の中南米諸国は、国際紛争を武力で解決しない方向に動き始めている。こんな今だから、日本は世界に向かって9条を輝かせようではないか。もはや国家レベルの平和を願う市民ではなく、世界レベルの平和を願う市民となって、大きなうねりを作ろう。これが、9条世界会議の歴史的意義だ。・・・・・・大まかな講演の内容である。 
高田健さんの講演は憲法9条の今を知る上でとても有意義であったと思う。しかし、九条を守るもう一つの視点として私は、日米同盟関係の見直しを掲げたい。もともと9条は、日本が戦争を出来ないようアメリカが与えたにもかかわらず、御都合主義のアメリカの戦略が変わって日本も同盟国として戦争に協力して欲しいが、戦争の出来ない憲法9条が邪魔になっているのではないか? 
戦争をしないという9条は理想ではなく、簡単にアメリカとともに戦争を出来ない現実を作った。日米同盟のもと、9条を変えてアメリカと一緒に戦争をする国になりたくないなら、もう一度日米軍事同盟を検討すべき時が来ているのではないか?別にアメリカと対立するという事でなく、9条を変えないで、アメリカから自立し、友好関係を保ちながら、平和運動の戦略として、9条の考えを世界に広げ世界平和に貢献する。アメリカに服従する事が愛国心とは思えない。むしろ世界に9条を広げて世界の人々から愛される日本になることが、平和につながると思う。                            (戦争を知らない主婦 54歳)

<お出かけ情報>
九条の会・千葉医療者の会結成の集い
日時:4月27日(日)午後2時から
場所:プラザ菜の花大会議室
主催:九条の会・千葉医療者の会講演:香山リカさん(精神科医)

講演と和太鼓の集い
日時:5月3日(土) 午後1時〜
場所:千葉市民文化交流センター
講師: 山川建夫さん 演題:「生きるために考えようー平和と環境を」  
和太鼓演奏 市原山火太鼓参加費:500円主催 千葉県憲法集会実行委員会

5.3千葉県憲法集会
日時:5月3日(土)午後1時30分開会
場所:千葉市生涯学習センター
講師: 浅井基文さん 平和の歌声 千葉うたごえ9条の会
共催:千葉県憲法会議・憲法改悪反対千葉県共同センター

生かそう憲法 輝け9条憲法集会&パレード
日時:5月3日(土)午後1時30分〜
場所:日比谷公会堂
スピーチ:湯川れい子、福島みずほ、志位和夫, アン・ライト
15時30分から銀座パレード主催 5・3憲法集会実行委員会

新着図書の紹介
『日本の軍事費—巨大な無駄と利権』安保破棄中央実行委員会編集/発行。九条2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と誓った国が5兆円以上の税金を軍事費につぎ込んでいる。これは世界第5位。どうしてそのような構造になったか?是非一読を。
『イマジン9 想像してごらん 戦争のない世界を』成瀬政博イラスト、イマジン9プロジェクト著。世界が9条を選んだら、どんな素敵な世の中になるでしょう。子供達と一緒に読んでもほんわか楽しい本です。


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